取材・撮影裏話  2010年(昨年)へ→ 秋〜冬
                                                    2011年(今年)へ→ 春 夏、秋


写真・文章 久保田
■企画・編集室から(2011年 夏)


●裏高尾の珍しい鳥
 8月28日、裏高尾・小仏川沿いの常林寺付近のはるか上空でクマタカ2羽を観察しました。高尾山域では珍しい例と思います。この場所は高速道路が平野から狭い谷すじに入る場所で、架橋上の路面が太陽熱で暖められること、地形的要因などで上昇気流が起こりやすいエリアです。そのせいか年間を通してトビを多数見かけます。今回もトビを見ていると、さらに上空を滑空する大型のタカを発見、クマタカであることを双眼鏡で確認しました。なぜこのような場所に来たのかは分かりませんが、これだけトビが多い場所で営巣している可能性は低いと思います。しかし、八王子城跡から西に広がる地域なら少しは可能性はあるかも知れません。この付近は時間的に都心にも近く、もし営巣していれば、誰もがクマタカを観察できる楽しいエリアとなるのですが! なお、近くの日影沢でアカショウビンの鳴き声を聞いたという、信頼度の高い情報もあります。
※数年前にほぼ同じ場所でクマタカを目撃された方がおられて、その話をしても誰にも信じてもらえなかったとのことでした。

※飛翔写真はニコンD300に70〜300mmレンズ・450mm相当で撮影したものを、PCで判別できるギリギリまで拡大しましたので画像が荒れています。

8月28日・クマタカ成鳥

8月28日・クマタカ成鳥

8月28日・トビ

2010年2月21日・トビ集団


●秋の蝶が定着!
 晩夏になると、庭先でチラチラ飛んでいるヤマトシジミより少し大きく、俊敏に飛ぶウラナミシジミが増えてきます。しかし、この蝶は冬に霜が降りるような場所では越冬できず、関東では房総半島南端付近でないと死滅します。ところが、この蝶は春から短期間で世代を繰り返し増えて、九州、四国、本州全域はもちろん、秋には北海道まで分布を広げます。
 多摩市では今年は8月16日に食草となるマメ科の農作物の畑でかなりの数を発見、この時の蝶は遠くから飛んで来て定着していたのか、ほとんどがボロボロでした。しかし、29日に同じ場所に行くと新鮮な個体ばかりに入れ替わっていました。おそらくこの地で産まれた卵から成虫となったものと思います。
 まもなく、すぐ近くの多摩川土手周辺ではクズの花が咲き出しますが、この花はウラナミシジミの幼虫の好物で、畑からも移って行くかもしれません。これからさらに数が増えて、秋にはニラの花やクズのある場所で必ず見つかるようになります。
※ウラナミシジミは年6化ぐらいとされています。越冬形態が卵などとは限定されていませんので、無霜地帯では年間を通じて姿を見ることが出来ます。多化性の似た種類は夏のサイクルは産卵から羽化まで25日ほどであることから、今年の多摩市への本格的な到達は、7月下旬から8月上旬であったと思われます。

ほとんどが翅が擦り切れた個体・8月16日

どれも新鮮な個体・8月29日


●タカの渡りが始まった?!
 8月25日、午後から天候が回復したので、多摩川に近い都立桜ヶ丘公園(多摩市)に行きました。蒸し暑く、お目当てのナンバンギセルはまだ咲いていませんでした。夕方4時を過ぎたので下り始めたら、雑木林の少し上で2羽の大きさの違う猛禽が旋回するように滑空しているのが見えます。この時期? 一瞬留鳥オオタカと思いましたが、よく観察すると、大きいのがノスリで小さいのはサシバ幼鳥です。2種とも夏には見かけない種類です。特にサシバは夏鳥で谷戸で繁殖するので、八王子方面なら可能性はありますが、多摩市周辺は探しましたが見つからず、繁殖はしていないようです。おそらく通過個体と思います。ノスリは冬はこの公園にも定着しますが、夏に見たのは初めてです。通常は9月に入って、カモの第一陣、コガモが大栗川(多摩川支流)辺りで確認できる頃から姿を現します。いよいよ今年も猛禽の移動・渡りの季節が始まったのかもしれません。
※サシバは昔はこの地でも繁殖していたと思います。桜ヶ丘公園の北西の復元田んぼ周辺は規模は小さいものの、サシバが繁殖してもおかしくないような雰囲気です。この場所の近くにはフクロウもいて、オオタカも見つかる確率も高いです。
※数日後、ナンバンギセルを再度探すと、いつもより見えにくい場所に数株咲いており、花が終わったものもありました。まだ、咲いていないわけではありませんでした。

サシバ幼鳥・8月25日

ノスリ・8月25日


●多摩川の珍しい蝶
 多摩川中流域の河川敷では、毎年お盆が過ぎると全国的には珍しいミヤマチャバネセセリやギンイチモンジセセリの3回目の羽化が始まります。18日朝、府中市側の発生地を訪れました。しかし、少し早かったせいか、見つかりません。昨年は19日に観察、この時は発生初期でミヤマチャバネセセリが6頭、ギンイチモンジセセリは見つかりませんでした。今年は少し遅いかな? とあきらめかけた頃、ギンイチモンジセセリが1頭とびだしてくれました。結局これだけ。
 ギンイチモンジセセリは後翅の裏に白帯があることから名づけられたと思いますが、これは春型。夏は白帯は目立ちません。夏には2化と3化があるので過去の多数の写真から比べて見ました。第3化の方が白帯が少し目立つ傾向があるような気がしますが、個体差の範囲内のような雰囲気です。翅を細かくメッシュ分けして、詳細な色と形のデータを比べれば、どこかに徹底的な違いが見つかる可能性もありますが?…。
※ギンイチモンジセセリの♂♀の翅は差がなく、区別が困難とされます。しかし、改めて写真を並べてみると、♂は前翅裏の黒っぽい部分が、後翅裏の外縁より少しはみ出し、一見、後翅の外縁に黒い縁取りがあるように見える傾向があります。この部分で、野外でも区別できそうです。
※ギンイチモンジセセリは全国に分布しますが、分布域の河川の環境悪化のせいか各地で減少、国の準絶滅危惧種(NT)にしていされています。多摩川ではおおむね狛江付近より上流に見られ、中流域に多産地も何ヶ所かあります。上流方面では、昨年、高尾山山麓の小仏川でも観察できました。


昨年4月25日・第1化(春型)

昨年7月1日・第2化(夏型)

昨年8月21日・第3化(夏型)

2011年8月29日・第3化(夏型)
 ギンイチモンジセセリとほぼ同じ場所、同じサイクルで3化となるのがミヤマチャバネセセリです。一般には年2化とされていますが、多摩川では3化、しかも3化の時期が8月下旬が中心になることから、これが常態で、時として秋に3化が現れるのではありません。また、2化と3化の間には確実に成虫が見られない空白時期があることから、2化がだらだらと発生し、あたかも3化があるように見えるとは考えにくいです。何度もこのことは書きましたが、認知されないケースがあるので、重ねて追記しました。
※8月18日、ミヤマチャバネセセリの第3化を確認するために発生地に行きました。しかし、姿がなく、まだ早いのか? と思いました。ところが、21日に対岸の多摩市側で散歩中に数頭発見、23日、再度発生地に行きました。今度は姿を確認したものの、撮影できたのは1頭だけ、この場所としては異常に少ない。しかたなく、少し下流の別の発生地に移動しました。そこは♂♀ともにかなりいて例年並でした。原因は分かりませんが、普段観察している発生地は3化の幼虫の時期に多摩川の増水で、この時期としては珍しく冠水、少し下流の発生地は水にはつかりませんでした。この事が影響したのか、あるいは、今年は花火大会が中止となり、河川敷の小径が草刈りをされなかったため、発生地の草丈が伸びすぎて拡散したのか? 原因はよく分かりません。
※7月12日のミヤマチャバネセセリ第2化の時期は多忙で、例年より観察日が遅くなってしまいました。昨年7月1日の観察では♂♀ともに見られ、ほぼ最盛期前でした。

4月28日・第1化

4月24日・第1化

7月12日・第2化

8月23日・第3化


●高尾山・夏休みの探蝶散策
 8月10日、裏高尾の日影沢に行きました。都会は酷暑でも渓谷はさわやかで汗などかきません。気持ちよく林道を歩いていると、変な蝶がいました。ルリシジミにしては小さく、翅表は空色ではなく、青色が深く美しい。ん…? 翅裏は明るいけれど? 紋様の特徴はスギタニルリシジミそのもの? もしスギタニなら第2化となります。図鑑によると通常は年1化だが、極めて稀に第2化も見つかるようです。やはりスギタニに見えますが、よく分かりません?
 この時期、例年なら渓流沿いにクサギの白い花が咲いて、これをめがけて多くのアゲハの仲間がやって来ます。ところが、今年はまだ蕾でした。春の気温が低かったためでしょうか? 期待はずれで少し落胆しましたが、なんとキャンプ場で初夏の蝶オオムラサキが飛んでいました。スミナガシやアオバセセリもいますが本格的な最盛期は、来週からのようにも思えます。 
【アクセス】JR中央線、京王線・高尾駅下車。駅前から「小仏」行きバスで、日影下車。少し路沿いに上流に歩くと橋があり、これを渡ると日影沢。
※日影沢キャンプ場は無料で、バーベキューもできます。ただし、高尾森林センターに事前の申し込みが必要。詳細は下記にご問い合わせください。現地で管理をされているのは、野鳥や蝶、動物にも詳しい親切な方です。
050-3160-6040


スギタニルリシジミに見えるが、白っぽい!2化?

今年はまだ残存していたオオムラサキ

日を浴びるカラスアゲハ

吸水し、その水を排泄するアオバセセリ
デンデンムシ観察
 陸貝(デンデンムシの仲間)は分布域が複雑です。同じような平野の環境でも、大阪はナミマイマイ、京都はクチベニマイマイ、東京はミスジマイマイなどと、よく見られる種類が違います。関東地方を代表するミスジマイマイも、利根川より北部は近い種類のヒタチマイマイと混在する分布域に変わるようです。裏高尾周辺ではしばしばミスジマイマイの仲間で虎斑模様が美しいトラマイマイがいます。トラマイマイはヒタチマイマイに似ていますが、たくさん見慣れると雰囲気の違いが分かります。しかし、厳密にこの2種を区別するのは難しく、DNA鑑定などをしないと確定できないこともあります。
 陸貝は未だに謎が多い分野です。ただ、最近は陸貝が好む、林や木造住宅、庭、疎水周辺などの環境が激減して、都市部を中心に陸貝全体が壊滅的な打撃を受けています。しかも陸貝の愛好家が少ないので基本的なデータが不足しており、この仲間はよく分からないまま姿を消してしまうかもしれません。

トラマイマイ
(裏高尾・東京都)

標準的なミスジマイマイ(府中市・東京都)


●カワウのアユ捕獲作戦・多摩川
 カワウは基本的には留鳥で、多摩川・四谷橋近くの送電線に多数が集まっているのは有名です。この時期、カワウの胃袋を支えるのがアユです。多摩川のアユは戦後水質悪化でほぼ絶滅、1975年に正式に遡上が再確認されました。それから徐々に数が増え、今年は過去最大で遡上数220万匹を超えました。四谷橋付近にも多数の魚影が見られます。
 カワウの群れは上空からアユの群れを確認すると、着水して潜り、アユを円形に追い込みます。ある程度集まったところの水面にカワウが密集、その下は大きな影となります。魚は影に逃げ込む習性があり、カワウはアユがびっしり集まったところを一斉に潜って食べてしまいます。
※多摩川支流の秋川周辺ではアユ漁が盛んです。漁協はカワウによってアユが食べられるので困って、水面近くに飛翔の邪魔になる糸などを張って追い払っています。四谷橋周辺はアユ漁は行われていないので、カワウの天国状態ですが、これでカワウが増えたら? と考えると複雑な心境です。


1、アユの群れを円形に囲んで集める

2、集団で水面に影をつくりアユをその下に誘導

3、いっせいに潜って「いただきます!」

最近はものすごく増えた多摩川のアユ


●身近な場所で繁殖する小形猛禽・ツミ2
 関東地方西部では、平地に残った小さな林でもツミが繁殖します。今年、6月下旬に巣立った観察中のツミ3羽は、その後も順調に育っています。この林では小鳥を除くと、ハシボソガラス、オナガ、ツミが営巣しました。ツミの巣立ち初期にカラスの幼鳥1羽が巣から落ちて、なぜかツミの巣の下近くまで歩いて行きました、親はツミの攻撃が怖いのか、少し離れた電信柱から見ているだけでした。翌日、幼鳥は自分の巣までは上がれないものの、カラスエリアの木の枝までたどり着いていました。やがてツミの幼鳥も飛べるようになり、巣の近くをあちこち移動するようになると、少し離れた高い木のてっぺんにツミの親が出現。幼鳥を観察しているようでした。この場所は本来オナガのエリアです。早速モビングされ追い払われました。最近はツミ幼鳥はさらに広い範囲を飛ぶようになり、巣周辺を空けていると、ツミの巣の近くにオナガの家族が侵入し始めました。このように短時間でも連続して観察すると、いろいろなことが分かって楽しみも増します。
※ツミは営巣場所を公開すると、ごく一部ですが、鳥の習性も無視して写真を撮るために追いかけ回す人がいます。そのため繁殖場所の詳細は紹介していません。また、観察は短時間で少人数が基本で、指差したり、おしゃべりは鳥は嫌うようです。


幼さが消えた幼鳥

近くの枝に移ったツミ幼鳥

ツミにモビングするオナガ

兄弟で追いかけっこをするツミ幼鳥


●ツバメのねぐらは大盛況
 ツバメは子育てが一段落すると、いつの間にか街から姿を消します。それらは河川の規模の大きな葦原周辺などに移動しており、大集団となります。多摩川の場合、流域に5ヶ所ほどの有名な集結場所(ねぐら)があり、府中市四谷橋付近は規模も大きく、数え切れないほどいて、1万羽は超えていると思います。しかし、日中に河川周辺を歩いても、そのような集団は見えません。ところが日没5分ぐらい前になると、まるで地から湧いたようにツバメの集団が出現、葦原上空を飛び回り、日没5分ほどの間大騒ぎをして虫などを捕らえます。やがてツバメ達は葦にとまって、ねぐらとします。この付近のツバメはツバメやイワツバメで、最近は温暖な地方を好むコシアカツバメも見かけますが、これらがすべてツバメと同じねぐらに入り込んでいるかは分かりません。ねぐらに集まるツバメの数は7月下旬がピークで、今が観察ベストシーズンです。
【アクセス】京王電鉄・中河原駅下車、徒歩5〜6分で多摩川に。ここから上流に四谷橋の手前の大きな葦原へ。
※四谷橋下流の葦原はアレチウリなどのツル植物などがはびこるようになりました。これらが覆うと葦が枯れて、オオブタクサなどの高茎草原となります。この付近もその影響で、一時は集まるツバメの数も減少しました。しかし、地元の府中市の野鳥観察のグループによってアレチウリなどを除去され、その結果ツバメの数も回復してきました。

昼間はもちろん、夕方でもツバメは見えない

日没直前に突然大群が現れる

ツバメの腹は白い

最近多摩川でも増えてきたコシアカツバメ


●身近な場所で繁殖する小形猛禽・ツミ1
 関東地方西部では、大きなケヤキや針葉樹が残る公園や神社境内がたくさんあります。このような場所で繁殖するのがツミです。オオタカ、ハイタカの仲間ですが、ハトぐらいの小形猛禽です。ツミの脅威はカラスで、同じカラスの仲間のオナガとはさほど仲は悪くありません。オナガは自分の営巣場所にカラスを寄せつけませんので、ツミとオナガの巣は近い場所にあるのが普通で、この写真のツミ巣の近くのケヤキにもオナガの巣があり、幼鳥も見えました。この時期から幼鳥は巣立ちして狩りを練習、秋までに一人前となり、一部はこの地にとどまりますが、多くは南に飛び去ります。
※一般に猛禽類の巣には針金ハンガーは使われません。これがあるとカラスの巣の可能性が高くなります。しかし、今回のツミの巣は巣材としてたくさんの針金ハンガーが使用されており、本来の皿型の巣も木の枝をほとんど使われていません。なにより注目すべきは、巣の上部に巣がつぼ型に見えるような防御柵状の囲いがあることです。このような例の報告はないと思います。
※ツミはカメラ・マニアに人気があり、営巣場所を公開すると、ごく一部ですが、鳥の習性も無視して追いかけ回す人がいます。そのため繁殖場所の詳細は紹介していません。


母親はかなり若い

巣から枝に移ったばかりの雛

ツミの巣近くにいるオナガ

多量の針金ハンガーで組みあげたツミの巣


●北海道・初夏の鳥
 大雪山系・赤岳頂稜周辺はハイマツ帯となり、野鳥では本州では見られないギンザンマシコや夏鳥のノゴマも繁殖しています。山麓の公園上空ではカラスと鋭くバトルしているチゴハヤブサを発見、状況から幼鳥を守る行動と思われます。チゴハヤブサの繁殖地は日本では北海道が主で、東北地方まで、それ以南ではほとんど繁殖例はありません。
※チゴハヤブサは夏鳥で留鳥ハヤブサに比べるとかなり小さく、チョウゲンボウぐらい。はっきりしたハヤブサひげと下腹部が赤っぽいのが特徴。

高山では人を恐れないギンザンマシコ♂

ギンザンマシコはハイマツ帯で繁殖している

北海道で繁殖するノゴマ

カラスのモビングをかわすチゴハヤブサ
○大雪山のスミレ
 大雪山・赤岳へ登る登山道沿いには、珍しいスミレも咲いていました。最近まで大雪山特産種とされてきたジンヨウキスミレです。以前はオオバキスミレの変種扱いでしたが、托葉の形などの違いから、独立した種類となりました。他のオオバキスミレの仲間とは葉の形がかなり違います。もう1種類はウスバスミレで、一見すると数が多いミヤマツボスミレのような感じもしますが、側花弁の内側に毛はなく、鋸歯が指先でつまんで少し重ねたような形をしています。この仲間は本種を含めて日本に3種あり、いずれも亜高山針葉樹林上部でたまに見かける珍しい種類です。
※ウスバスミレとチシマウスバスミレの区別は難しいが、花柱の上部が明らかに膨らむことで最終判断をするのが無難。

ジンヨウキスミレ

ウスバスミレ


●北海道・初夏の蝶1
 北海道にはリンゴシジミという小さな蝶がいます。かっては極めて偶然にしか採集されない珍品と思われていました。しかし、食樹がウワミズザクラやスモモなどと詳細が分かるにつれて、各地で発見されるようになりました。この蝶はほとんど食樹周辺外には移動しません。また、食樹はクヌギなどのようには群生せず、点々と見られるだけ。このことが発生量、採集例が少なかった原因でした。しかし、現在も蝶ファンの憧れであることは変わりません。最近この蝶に深刻な事態が発生しています。まず、蝶採集目的のマニア達が数日間連続して同じ発生樹を取り囲み、目につくすべてのリンゴシジミを持ち去ること。これで絶滅した場所もあるようです。また、過疎化により、人家周辺に見られた発生樹が切り倒されていることです。
 一部、有名な種類や高山地域の蝶は保護が進んできましたが、身近な場所の珍しい蝶はあまり見向きもされず、私有地問題などもあり、絶滅への坂を転がり落ちているような気がします。
※帯広などごく一部にリンゴシジミを保護している場所がありますが、その他の地域では保護対策は、いる場所をしゃべらない! 程度のようです。

リンゴシジミ♀

リンゴシジミ・産卵行動?


●北海道・初夏の蝶2
 大雪山系・赤岳頂稜周辺に、日本ではこの地域など北海道の限られた高山でしか見られないウスバキチョウを見に行きました。意外だったのは同じ場所の個体でも変異が大きく、いろいろなタイプが見られることです。遺伝的なものなのか、あるいは羽化後、鱗粉がはげたりして、新鮮個体から雰囲気が変わったものかは遠目では分かりません。同じ場所には小さなアサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲも飛んでいました。
※この付近には上記3種以外にもう少し夏本番になるとカラフトルリシジミがいます。これら4種は国指定の天然記念物です。

ウスバキチョウ・標準的なタイプ

ウスバキチョウ・コントラストが強いタイプ

アサヒヒョウモンは小さい

ダイセツタカネヒカゲは目立たない


●「森の宝石」ゼフィルス・丘陵編
 森に棲むゼフィルスと呼ばれるシジミチョウの一群には、♂が金青色に輝く種類がたくさんいます。これらの♂は、数頭がテリトリーを争い、卍にからまるように飛びます。その美しさは、一度見たら病みつきになるほどです。これらのほとんどが深山のブナ、ミズナラなどの森にいますが、平地や丘陵でも何種類か分布しています。その代表的なものはオオミドリとミドリシジミの2種で、関東地方でも見られます。
 オオミドリの場合はクヌギ、コナラの多い丘陵地の雑木林の稜線付近で、林にぽっかり穴があいたような場所、時間は午前中11時頃まで。ミドリシジミはハンノキ林で夕方となります。両種とも観察には、陽が差さし込むことが条件になります。今年は春先の低温で越冬卵の孵化が遅れたのか昨年より遅く、多摩丘陵のオオミドリは15日で発生初期、同じ時期に南部の平地のハンノキ林でミドリシジミがやっと羽化、秋ヶ瀬(埼玉県)は25日ぐらいが見頃ではないでしょうか。
※テリトリー争いをしている時間帯は、蝶は高い場所で敏感に飛び、葉に舞い降りる時間は短いので、開翅した写真を撮るのは難しくなります。両種とも開翅写真は早朝がベストでは?
※ミドリシジミは埼玉県の蝶に指定され、荒川河川敷の秋ヶ瀬公園などで保護されています。今年は6月23日に行きましたが、なぜか1頭も出会うことはありませんでした。天候は晴れていました。


オオミドリシジミ♂開翅・多摩丘陵

オオミドリシジミ♂・多摩丘陵

ミドリシジミ♂開翅・秋ヶ瀬公園(昨年)

ミドリシジミ♂・秋ヶ瀬公園(昨年)


●梅雨の高尾山研究路の花
 ミシェラン・ガイドで紹介され、観光客が増した高尾山ですが、混むのは1号路だけで、その他の研究路は静寂な雰囲気です。この時期は有名な6号路のセッコク以外は目立つ花は少ないのですが、低山地に見られる珍しい花があります。暗がりにひっそり咲くのがムヨウラン、今年の3号路は昨年より花数も多いです。ただし、見られるのはごく限られた範囲だけです。目立たず見つけるのが難しいのはヒトツボクロ、目の前で指差しても分からない人の方が多い花です。人気のイナモリソウは各研究路にぽつんぽつんと見つかりますが、時期的に最盛期は過ぎました。この時期になっても咲いているタツナミソウはトウゴクシソバタツナミの可能性が高いと思います。
【アクセス・京王線新宿駅から高尾山口駅下車で約56分、370円。JR中央線は高尾駅で京王線に乗り換え高尾山口駅へ】
※セッコクは以前落下したものをケーブルカー・清滝駅ホームの桜の木に着生させてあります。この花が終わる頃、6号路のスギに着生している花は満開になります。
※イナモリソウは関東以西の山地で見られますが、大変数が少なく絶滅が心配される植物です。神奈川県植物誌によると、県内に確認されるのは2ヶ所ほど。

やさしい雰囲気のイナモリソウ・4号路

セッコクはスギの枝に着生・6号路

地味なムヨウラン・3号路

小さく目立たないラン、ヒトツボクロ3号路上部


   2010年(昨年)へ→ 秋〜冬 2011年(今年)へ→ 夏、秋
 トップのページに戻る